竹本泉『ちょっとコマーシャル』リニューアル版

 例によって初期短編集のリニューアル版。こちらは23年ぶり。
 総合的には、普通の話4に対して、変な話1。竹本泉の変な話に慣れているせいで、普通の話だと評価を下すときの、「変さ」のスレッショルドが下がっているかもしれないのだけれど、少なくとも俺はこの短編集が変な話だらけだとは思わない。その辺が少し寂しいと言えば寂しいけれど、各作品のタイトルには現在にも続いている竹本泉のセンスの片鱗を感じることで楽しめて、概ね満足のいく短編集。
 個人的なお気に入りの順を書こうと思ったけれど、困った。どれも面白いな。しょうがないので、各作品のタイトルと一言コメントを。
 「にっちもさっちもひとみちゃん」 普通。タイトルは「にっちもさっちも行かないほど不器用なひとみちゃん」の略だと思えば、そこまで変ではない。
 「すすみ時計は大きらい」 普通。誕生日の差を「すすみ時計」と表現。
 「屋根裏のセレナーデ」 普通。没落貴族(?)がパブの屋根裏に住み込みのピアノ弾きになる話。
 「1 + 1 = サンドイッチ」 普通の話なんだけど、タイトルだけ見るとコレが一番変そうだなあ。双子の男の子の間で揺れる女の子の話。この女の子は、眼鏡をかけたり外したりしているのですが、その理由がよくわかりません。どっちも可愛いからいいけれど。
 「ちょっとコマーシャル」 変な話。詳細を書くとネタバレになるので書かない。まあ竹本泉だから、ということで済ませるけれども。