原作 結城 浩 / 作画 日坂 水柯『数学ガール 上』

 知人から勧められて購入。勧められたときには「sakakiguraは好みが分かりやすいなあ。ベクトルをヴェクタという女の子とかスキでしょ?(大意)」みたいな、ある意味散々な言われようだったが。
 言われたとおり、面白かったよ。あらかじめ聞いていた「1の3乗根と男女女の三角関係」の話は、読んでみて何か釈然としなかったので、色々紙に書きながら考えてしまった。具体的にはクライマックスの見開きページ直後の「私達の / 腕の長さの和が / 1ならね」の部分についてだね。読んでいて「腕の長さの和」ってのは1の3乗根ω、ω2、1 の3点が男女女の3人に対応していて、その内任意の2点間の距離 D1 のメタファーだとすると、D1が1でないのは自明だと思うんだけど、何故1になるのかな? と疑問だった。色々考えたところ、「男女女の3人がω、ω2、1 の3点に対応する」のではなく、「男は原点 0 、女2人はω、ω2 なのでは?」と思った。そう考えると、ω と ω2 は実軸に対して線対称なのだが、自分と相手を掛け合わせると実軸上に存在できるという性質があって、それが3人の関係のメタファーとしてすごく秀逸で、さらに ω と ω2 は虚部を持っていて、その辺りが「男の子には分からない女の子のココロ」みたいな辺りをよく表していて、さかのぼると、出会ったときの実数の数列クイズってのも、女から男へのアプローチとして…………みたいな風に色々とドライブされて、ちょっとオーバーヒート気味になった。更に、この文章を書いているときに「三角関係を描くのに三角関数を使うて!」と改めて、その構成の上手さに舌を巻いた。下巻が楽しみ。
 以下小ネタ。
 冒頭の数列クイズはしばらく(1、2分? 結構な時間かな)考えて何とか3問解けた。考えた後に「フィボナッチ数列との出会いは、小学生の頃に教育テレビで見た秋山仁先生の番組だったなあ」とかいう、ある種どうでもいいことを思い出しながらも、心地よい疲れに浸っていた。その辺の小ネタも楽しい作品。