『映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝』

 毎年恒例の映画ドラえもんの時期なので、近所の映画館でお子様に混じって観てきました。以下ネタばれ回避のために、「続きを読む」記法で書きますよ。


 とりあえず、ドラえもんでやらなくてもいいんじゃないかな、と言う内容でした。具体的には、議会のくだりとかで「正義のために!」みたいな演説をして、少数派の意見を黙殺する感じとかが、(私は当時TVを持っていなかったから直接見ていなくて、知人から間接的に聞いたところの)ブッシュの演説とかを想起させて、「何だか出来の悪いカリカチュアだなあ」と思ったりとか、森の民のくだりが「何だかスタジオジブリっぽいなあ」と思ったりとか。
 上に書いた以外に、スタジオジブリを思わせるところは、大臣が黒い木の葉を恐る恐る触るところとか(手つきが、飛行石に恐る恐るさわるムスカみたいだと思った)、クライマックスで東京が火球に覆われるところとか、それをみて植物星の人たちが「援軍はまだか!」みたいな悲壮な叫びを上げるところとか(これは、何だかナウシカのクライマックスみたいなカタストロフだなあ、と思ったりとか)、のび太がキー坊を助けるために、赤い液体の中に入るところとか(酸の海へのオマージュ?)。最後は若干こじつけっぽいですが、何だか「スタッフは三鷹とか吉祥寺で就職したほうがいいんじゃないか?」と思ってしまうような感じが目に付いてしまって。
 あと、こじ付け的にドラえもんひみつ道具の殆どがつかえなくなっている、ってのもポイントを下げてしまう、と感じました。ドラミが「定期的に検査しないと」と言って、殆どの道具を持っていった挙句、「タイムマシンも車検だから」と、タイムマシンまでもって行きます。しかもドラミの出番はここだけ。使えないなら使えないで、もうちょっと合理的な展開にして欲しいし、スタッフはひみつ道具に心躍らせたりした経験がないんだろうか? と穿った見方をしたくなってしまう。
 シナリオは、ドラえもんだと思って見なければ、まあ面白いと思うし(キー坊が巨人に取り込まれてしまうところのくだりが、ちょっとあざといと言えばあざとくて、気になるけれど)、先に挙げた「スタジオジブリっぽさ」も、ちょっと距離を置いてみれば、元ネタ探しとして楽しめないことはない(元ネタ、と思っているのは俺の思い込み、と言う可能性も高いのだけれど)けど、それが「ドラえもん」と言う皮をかぶって提示されると、何だか嫌な気分になるなあ。
 あと、ジィに三宅裕二を持ってきた眼力は評価するけれど、ジィの手のひらで踊らされている感があるのは、ちょっといただけない。のび太の名前の由来のくだりとか、見ていてあまりにあざとい感じがして、いただけなかった。
 ここまで散々けなしてきたけれど、見ていて泣いてしまったのは事実だ。リーレの衣装のデザインがスターウォーズみたいなサイケデリックな印象があったのも好き。リーレが、最後くらいで、他の人間を気球で危険な場所から送り出すときに、自分は気球に乗らない辺りの献身的な感じは、王族ってこうじゃなきゃなあ、と個人的には好印象だし、リーレとしずかちゃんにちょっと心の交流があったりするのも楽しいよ。