涼元悠一『ナハトイェーガー 〜菩提樹荘の闇狩姫〜』

 表紙と裏表紙の紹介文に惹かれて即買い。馥郁たる百合の薫りもさることながら、紹介文にあった「時の螺旋」という言葉にも惹かれた。昨日のリストにある『琥珀の心臓』もそうだけれど、こういう暗喩っぽい名詞の使い方に、私は何だか叙情的なものを感じてしまって弱いなあ。
 序盤は結構耽美で繊細な百合の世界ですが、後半になるにつれて段々はっちゃけて来るといいましょうか、ドタバタ度が増すといいましょうか、そんな状態ででも百合っぽい描写が多くなります。私はどちらも好きです。
 この辺の雰囲気の違いというのはどういうものなのでしょうか。男の子の想定する百合と、実際に女子だけの社会で過ごしたことのある女の子の想定する百合というのは、大分隔たりがあるのでしょうか。それでも本質的な相手のことを大切に思う気持ちってのには、そんなに隔たりがないように思えますし、隔たりを感じるのはガジェットとかフレーバーとかの細かい(それでこそ女の子にしかわからない符丁というか習慣というか、そういったレベルの)部分での違いなのでしょうか。この辺は時間があったら考えてみようかなあ、とは思うのですが、作者の性別を基準に二元論を展開するなんて、この二十一世紀にやっても意味のあることなのでしょうか。
 大分話が脱線してしまいました。各キャラクタも充分に魅力的だと思いますし(ただちょっといろいろキャラクタがいすぎて、うまく掘り下げられていないキャラクタもいるようですが……ちょっとかわいそう)、この巻の最後は続きがあるような終わり方ですので、次のお話に期待が持てます。次も出してください。