岩田洋季『護くんに女神の祝福を!』11巻

 ようやく最終エピソードまで来た。何というか、これまでやって来たコトの総決算という感じ。シリーズを通じて幾度となく示されてきた恋愛における真摯さ・フェアさへの讃歌が今回もふんだんに描かれている。同時に通奏低音として(と言うと若干言いすぎかもしれないけど)存在していた絢子の裏の顔についての記述やら、今巻までに登場したキャラが総登場してくるやら、盛り沢山の内容。最終エピソードだからといった気負いも一切感じられず、これまでのシリーズで描いた魅力をこれまでと同じクオリティで描き続ける。とかいうことを書くと「今までと同じことの繰り返しだ」という批判もあるかもしれない。俺自身も5%くらい、そう思うこともある。でも俺の「印象」で従来と同じレベルのクオリティだということは、文章の「実体」としては、テーマ自体の記述がそうとは限らないけれど、従来以上のクオリティが必要なんじゃないのかな。それに最終エピソードだからって、伏線も無しにどんでん返しを仕込むよりも、それまで描いてきたものを再確認するような話を準備することに心を砕くのも、ひとつの勇気ある選択なんじゃないの。という訳で、シリアスとコメディーのバランスも従来通りで、非常に楽しめた。