天野こずえ『ARIA』10巻

 まず全体的なことから。何てゆーの、もう別に火星である必要はほとんど無いってのは、数巻前からそうなので、はなはだ今更と言う気もするが、今巻もやっぱりそんな感じ。ウンディーネ同士の交流物語ってのは、まあ別に否定するわけじゃないんだけど、初期の風景のインパクトに力点の置かれていた物語はもう帰って来ないのかなあ、と思うと、ちょっと淋しい。という訳で、こまごましたところをネタとして楽しんだり、設定厨のように重箱のスミをつっつくような楽しみ方を試してみることにする。
 誕生日。裏誕生日って言いたいだけちゃうんか、という話。A.C.ってやっぱりAfter Colonyの略なのかな。火星暦の13月〜24月は何ていう名前なのかな。読んだことないけど、火星SFの傑作とか読むと何か元ネタっぽいのがあるのかな。
 エピフィニア。魔女っ子かわいい。シャボン玉の中に灯火があるのはキレイだから好き。でも昔だったら月明かりに照らされた街と夜空に飛んでいく灯火入りシャボン玉みたいな絵を描くのかなあ、と知人と話していて考えた。
 トラゲット。前半部分のアトラのギリギリ感が大好き。こいずみまりの作品に出てきそうな、投げやりで捨て鉢な精神状態にあと一歩で陥りそうな辺りでタイトロープダンサーしているアトラが俺好みだ。勝ち組と勝ち組予備軍しか話に出さないよりはウンディーネ社会に深みが出ていいんじゃないの。それよりも、火星の物理的・実態的な世界に深みを出すような描写のほうが100倍好ましいが。前半は俺好みだったのに、後半で予想通りヌルくなった。別にこいずみまり的なものを天野こずえに求めてはいないから、まあいいんだけど。
 春夏秋冬。夏の描写の閉塞感とただっ広く世界の果てまでつながっていそうな感じを同時に描いている室内の描写が好き、というのはちょっと好意的にとらえすぎかしら。描き込みの精緻さは魅力の指標のひとつなのだけれど、別にそれにそこまでこだわんなくてもいい、と思うのは相対化しすぎているかしら。かしらかしら。
 課外授業。アリシアさんは娼婦かと思うくらいにエロスが。ベッドの上でリードしているお姉さまか。

「うん 多分ね
 『違う』『違う』と叱り続けていたら
 男の子は間違えるのがだんだん怖くなって
 最後には愛撫できなくなっちゃうと思ったの」

 星占い。12星座みたいだけど地球暦に直してやってんのかな。だったら火星暦ってあんまり意味ないんじゃないの? 季節の対応とか年中行事とかはでも火星暦か。12星座も火星暦に直して年2回牡羊座なら牡羊座の期間を設けているのかな。閏日とか閏月とかはやっぱりあるのかな。
 その他。グランマについて色々と衝撃の事実発覚。っていうか色々辻褄合うように考えるのが大変な気はするな。