深沢美潮『フォーチュン・クエスト 世にも幸せな冒険者たち』

 早速読了。ええと、なんて言っていいのか言葉に詰まるなあ。事実としてはこれは15年以上前の作品で、だからと言って全然古臭さと言ったものは無くて、非の打ち所が見つかりません。
 傑作か、と聞かれると、あんまり斬新な感じと言うか、インパクトと言うか、そんな言葉で表現されるものが少なかったので、傑作だ、と言い切ったりはしないのですが、ものすごいクセのなさと安定感とで、秀作、という評価はする。なんだろう、何を読んでいいのかわかんなかったら読んでみたら? 君がどういう人間でも、決して損はしないぜ? と言った感じ。
 何を書こうか考えていたときに、ものすごい昔に読んだ槙原敬之の紹介文に「最近は英語を使った歌詞が多いけど、槙原さんは素直な日本語にこだわっているんだ」みたいな文章があったのを思い出した(出典は失念)。あんまり下手に造語をしていない辺り、用語っぽく見えるものも、通常読者よく利用する身近な言葉の組み合わせであったりする辺りが、ひょっとしたら特徴なのかもしれない。
 そういえば、また出典は失念したが、高畑京一郎クリス・クロス』の評価で、「今や当たり前となっている、ゲーム・ファンタジー用語にくどくど説明をしすぎ」というのがあった気がする(俺は『クリス・クロス』好きよ? あんまりゲームもしなかったから、そういった説明がくどく感じることもなかったし)。その辺、ゲームとかの世界観を踏襲しつつも、説明が重くどくない、というのもクセのなさ、の一因かもしれない(この辺は口絵とか、挿絵とかが、まるでTRPGのルールブックの一ページみたいに見えるところが何箇所かあったので、その絵の説得力に依存するのかもしれない)。