神坂一『スレイヤーズ!』/『アトラスの魔道士』

 林原めぐみファンだった経歴もあるのに、今更初めて読みました。面白かった。
 とりあえず全体的な話から。『スレイヤーズ!』の巻末にある編集部の解説に書かれているほどには、リナのキャラクタにインパクトを感じなかった。これはスレイヤーズのラジオドラマとか劇場版とかごく一部のTVシリーズとか(ちょうど1巻目の話だったかなあ)を摂取していたせいもあるのかな。もしくは林原的なものとリナ的なものって俺の中では大分重複しているので、林原本人のトークを十代の頃に聞きすぎたのかもしれない。
 んで、1巻目『スレイヤーズ!』の話。何か随所で正統なファンタジーのパロディとされているようだけれど、俺はそうは感じなかった。多分ヴィデオゲームのRPGとかTRPGとかファンタジー小説とかにあまり触れないで生きてきたからかな。でも正統な、低レベルからちょこちょこ冒険してダンジョンに潜ってレベルをこつこつ上げていく、って言うスタイルだと、戦略的にどうなの、という気はする。正統(以下略)な構成だと、新規な部分って言うのは、ダンジョンの構造とか、謎解きとかに偏っていくのじゃないのかなあ(この辺は『フォーチュン・クエスト』の続きとか読むと、はっきりしたことが言えるかなあ)。「富士見だから原稿用紙250〜350枚内で」「出来る限りでっかい話を」とかって考えたときには、構成というか枠組みというか自体をいっぺんぶっ壊してみるしかないんじゃないの? とは思う。本当はたぶんそこまで考えてなくて、高レベルなキャラを基礎に考えていったら、敵も自然とレベルが高くなって、話のスケールも……っていう程度の事な気はするんだけどね。
 んで、1巻目では結構スケールのでかい世界の起源とかに絡むようなお話をやっているのに対して、2巻『アトラスの魔道士』では、魔道理論の話、って書くとちょっと堅苦しいけれど、魔道士って何してんの? 的なお話に絡めつつ、謎解きファンタジー風仕立て。1巻では、リナの説明台詞で印象に残ってたのが、世界の起源と魔王がらみのそれだったけど、2巻だと、魔道士とか魔道に関係した人の伝記っぽいそれ。まあ、どっちが優れているとかそういうことではなくて、どちらも作品世界の一面を充分に描写していると思います。