ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』

 何か物理的に薄いのと、活字が大きいのとで、すぐに読めてしまった。若干もの足りない感じがするなあ、何故かしら。まあ、表題作のタイトルが全てを示してはいるが、表題から想起されるものが必ずしも書かれている訳ではない辺りが注意点かな。よくも悪くもまとまっていて、あまりクセというかインパクトというか、そういったものには欠けるので、読むんだったら別の短編集を薦める。あと、海の話ばっかりで(連作中篇とでも言えばいいだろうか? でもあんまり個々の話につながりは無い)、バリエーションに欠ける辺りもちょっと評価が下がるかなあ(まあ、その辺は個人的な読書スタイルの問題で、話のガジェットが多岐にわたる程、自分の趣味に合致するものがある確率が増す、というだけなのかもしれないけれど)