千之ナイフ『ファウスト』

 古典とか歴史上エピソードから、ダイジェストというかフレーバーだけ取ってきて千之ナイフ先生がお得意の再構成を行ったと言うか、まあそんな作品集。『ファウスト』なのに『ファウスト』に取材しているのは42ページだよ? 『ファウスト』、ルイス・キャロルのエピソード、J・クレランド『ファニー・ヒル』、ジャンヌ・ダルクとジル・ド・レの話から取材しているみたい。ジル・ド・レの話が、ジャンヌが異端であった間のジルの苦悩を描いていたりして(千之ナイフ先生だから、そこまで重苦しくなるということはないんだけれど)、そこそこ面白かったかな。
 まあ、でもそれよりも『ファニー・ヒル』が、娼館に落とされた女の子が、たまたま会った純情そうな青年と初夜を遂げたあと、その青年との再開の約束を胸にしつつ、清純さと情熱っぽさをあわせもつ、売れっ妓としてのし上がっていく話なので、そりゃあ、俺そういう話大好きだよね。