乙ひより『かわいいあなた』

 うーん、百合モノは評価するときの言葉選びに困るなあ。何て言うか、俺の絵柄に対するボキャブラリーが少ないせいで、ストーリーに関することしか書けない(書かない)せいなのだけれど、百合モノのReviewを連続で書く時の区別化に困る。まあ、とりあえずがんばる。
 結構カジュアルな印象を受ける百合モノ短編集。何だろうな、男の子ウケしそうなタイプの女の子が何人かいたり、そういう女の子の合コンシーンがあったり、とか、そういう女の子が(俺にとっては、そういった男の子の恋愛に興味のなさそうなイメージのある、って大分偏見入ってる気がしますが……)手芸部に入部している、とか、その辺の閉塞感のなさ、というか箱庭の中のおままごと感のなさ、というのがいい方向に働いているのだと思う(別にこの作品に限ったことじゃないと思うが)。
 表題作になっている「かわいいあなた」については表紙絵の「涙ぐむ女の子とそれを見つめる女の子」の図と、帯の「お姫様より ずっとずっと CUTEな王子様」の文句によって全てが表されていると思うので、特に何も書かない。代わりに、俺個人は「冬色想い」が、この短編集では一番の傑作だと思う。冬の閉塞感と話の展開がマッチしていて、物凄く好印象だなあ。