袴田めら『夜空の王子と朝焼けの姫』

 いきなり余談。百合姫コミックスの一巻完結モノは全部持っている、というのが矜持だったのに、感想を書くのに、この本を見返していたら、タカハシマコ『乙女ケーキ』が抜けていることに気がついた。今度見つけたら買わなくちゃ。
 もう少し余談。この本はちょっと前に買っていたのに、この週になるまで読んでいませんでした。消費速度を何とかしないと。
 ようやく本編である本の感想。全体的にハッピーエンドが多く、ほほえましくなる百合短編集。個人的に一番コメディー的だと感じて好きな作品は「愛しのメイド様」かな。オチの付け方が、ハッピーエンドなのだが、一気にそこまで行くか、というインパクトがあって良い。別に「ちょっとづつ仲良くなるための一歩を踏み出しました」とか「会えないと思っていたのに会えました」っていうオチも好きなんだけれど、そういうオチよりも一気に深いところまで行ってしまう、という辺りが、逆に話がスピーディーでコメディとして成立する大きな要因となっている、と思う。あと、「あなたを虜に」で出てくる「重箱いっぱいのお弁当」というアイテムは、個人的に大好きなアイテムなので好印象だった。
 逆に、切ない感じで好きな作品は「放物線を描く花」と「彼女の猫は夢の番人」かな。前者は独占欲とか自分だけが知っているという優越感が満たされない、ことに気づいてしまった辺りが、後者はとうの昔に失ってしまったものへの執着に時間が経ってから気づかされしまう、という辺りがどうにも切なくて、刹那さを消せやしない。全然関係ないが、作品の切なさがとても印象的だった、ということを示すのに引用してみた。