森島明子『楽園の条件』

総評

 登場人物の年齢が高めなのは俺好みだ(書き下ろしを含む8本中6本で20代後半以上の登場人物が出てくる)。残りの作品でも、和風ファンタジーっぽい作品があって、無国籍な印象が俺は好み。

楽園の条件

星の向こうがわ

木漏れ日の中で

 OLの伊藤沙里菜とフリーライターの鷹見澄の2人のお話。時系列で言うと、「星の向こうがわ」→「楽園の条件」→「木漏れ日の中で」の順。話の盛り上がり具合で言うと、「今まではキスをする間柄だった沙里菜と澄の2人が、その先へ進む話」の「楽園の条件」が一番上で、次が「2人がキスをする間柄になる契機の話」である「星の向こうがわ」、3番目が「楽園の条件」の後日談である「木漏れ日の中で」かな。でも、どの話も見せどころがしっかりしていてよい。

20娘×30乙女

「攻」<->「守」(セメのハンタイはマモリ)

 美大予備校講師(兼イラストレーター)の30歳女子と美大予備校生20歳女子の話。両方とも恋愛に関しては似たような思考回路になってしまい、年の差なんて関係ないよ、という話かなあ。時々すれ違いも発生するんだけれど、何とかなる。

そして僕らは愛を目指す

 同棲中の女子カップルの話。片側がトラウマ持ちで、しばらくトラウマのフラッシュバックは治まっていたのだけれど……という話。ここまで書いてしまうと、ほとんどネタばらしをしているのと同様なのだけれど、そうとしか書きようがないので仕方ない。
 トラウマ女子の大人ぶった感じと、相方の子供っぽさの対比がいい感じ。

桃の味

 大好きな先輩にいつも想いを口に出して伝えているのだけれど、なかなか先輩は本気にしてくれなくて……という話。

桜姫花吹雪

 結婚の決まった姫様と、その側近の女武者の話。当然のことかもしれないけど、現代っぽい髪型と和装の取り合わせの無国籍な感じが、個人的に好み。作者もこの話が好きなようで、今後もこの作者には期待できるなあ。