機本伸司『神様のパズル』(承前?)

 とりあえず読了したので、改めて感想を書く。タイトルに『?』がついているのは、「対象作品は一緒だけれど、前の話の続きをするのかはよくわからなくて、ひょっとしたら同じ話になるかも」という程度の意味です。全部書き終わってからタイトルを決めなさいよ俺ってば。
 結論から言うと、いまいちのめり込めませんでした。血沸き肉躍る感じが無かったと言い換えればいいのかな。原因としては
   1)知人から釘を刺された。
   2)ヒロインが好みではない。
   3)俺が物理をまじめにやった経験が無い。
   4)癒し系(仮)の雰囲気が駄目。
 とか言うのが、ぱっと思いつくのですが、どれも正解ではない(若干1)〜4)が原因だと感じないことは無いけれど、致命的なほどではない)気がする。以下各項目の詳細を書きます。結論が知りたい人は下へスクロール。
 1)について。 知人から面白くないと釘を刺されたというせいで、俺がほかの小説にやっているような読み方が出来なかった、という可能性は、それじゃああまりに俺が受動的過ぎで個人的に嫌なのと、俺が気に入るような作品ってのは、俺の経験上、小手先の読み方を変えたくらいじゃ隠し切れないほど作者像(っていうか作者がその作品を書くのに考えていること)が滲み出ているもの(『運命のタロット』とかかな)なのと、2つの理由で却下。3)とも絡むけど、作者は書きたいことを一定レベル以上にちゃんと書いていると思います。どちらかと言うと濃い味付けの好きな(例えばケチャップとマスタードをどばどばかける様な感じ)俺としては、若干物足りない感じはあったけど、充分美味しいとは思います。
 2)について。 時系列が逆転するが、昨今のとりあえずツンデレって言っとけ感の漂う、アレ産業界隈の空気に辟易しているのは確かです。この本はあとがきを読むと2002年単行本が出版で、そういう言葉が出だした辺りみたいなので、別に雨後の筍のように大量発生したツンデレ(という言葉を書くのもちょっと違和感あるなあ)キャラでないことは時代的に明らかなのだが、自分の摂取順として、ツンデレという言葉がマスコミによって市民権を得ているかのような演出をされてしまった後の時代に、このヒロインを見ても、特になんとも思わない、と言うか、つい「また俗に言うツンデレか」と身構えてしまうと言うか。まあ、そんな感じではあるものの別にそこまで致命的ではない。
 3)について。 俺自身物理とかをあんまりちゃんとやった記憶が無いので、作品上で展開されている理論が、どうなのか(うまいこと嘘ついたなあ、と言って舌を巻ける類のものなんだろうね、きっと)が、いまいちわかっていないので、論理が展開されている際に、その展開と同調する感じで楽しむことが出来なかった。うん、その辺が分かってるともっと楽しめたとは思うんだけどね。これもまた致命的ではない。
 4)について。 別に癒し系自体が嫌いではない。ただ宇宙論とかそういう壮大な話をしているのに、とってつけたように癒し系っぽい空気を持ち込んでくるのが、若干鼻につくきらいが無いではない。でもこれもまた致命的ではない。
 
 /*--------この辺から結論だよ---------*/
 結局、主人公がどうにも蚊帳の外っぽい感じがしているのが、気に食わないのだと思う。話をドライブしているのは主にヒロインで、彼女は彼のあずかり知らぬところで起承転結をやってのけてしまっている、というのが。あと、ヒロインが色々悩んでいるのだけれど、それに対して、あまり積極的に主人公が踏み込まない(踏み込む余裕が主人公に無いのだろうけど)、と言ってもいい。別にヒロインが悩んでますっていうお話ならお話でもうちょっと書きようはあると思うんだ。ヒロイン視点で書けばもうちょっと俺好みの作品になって、さらにヒロインが万物理論を組み上げて相手を論破していく、とか言う話だと、さらに俺好みかな。結局自分語りか。