秋田禎信『カナスピカ』

 読んだ。ので感想を書く。
 (以下、この作品および秋田禎信の他作品のネタバレ記述があるので注意)
 ええと、秋田禎信ってこんなに抑制の効いた文章が書ける人だったんだ、というのが第一印象。個人的に秋田先生って文章が本筋から物凄く逸脱していく印象があって、おかげで何というか、嫌いじゃないんだけど、読んでてちょっと消化不良を起こしちゃう、というか、胃もたれがくるというか、個人的にどうでもいいような記述ばっかり目について食傷気味になっていまいち楽しみきれない、という作家さんなのです。でも俺が最初に買ったラノベは『我が胸に眠れ亡霊』(後半のアクションシーンは問答無用の格好よさである)だったりするし、『オーフェン』は少なくとも教会総本山行くとこまでは文句なく面白かったんだけどねえ。どうも東部編になってから段々よくわかんなくなってきて聖域最接近領来たくらいで止まっている。まさか、チャイルドマンより強い暗殺者がいるとはな……の辺り。『エンジェル・ハウリング』は記憶にも残ってないけど、4冊目くらいで止まってる。『オーフェン』も『エンジェル・ハウリング』も全巻持っているはすなのだがな。
 話を元に戻すと、その辺の秋田先生お得意の登場人物の台詞にかこつけて話が脱線していく感じが、適度に抑えられていて読みやすい感じ。あと、ファーストコンタクトもの風なガジェットなのも、その辺に寄与しているかも。つまり異文化を持つ登場キャラがいて、それは地球の尺度ではちょっと捉えかねる感じというのが、あらかじめ読者の側で前提として持っているので、秋田節でちょっとくらい脱線しても違和感なく読者の側で受容可能というか。ええと、編集の勝利、って言ってる? 言ってなくはないけど、秋田先生自身の力によるところが大きいと信じたい。
 まあ、今から秋田先生を読むんなら、抜群におススメする。