柚木N' 『フェチの品格』

フェチの品格 (バンブー・コミックス NAMAIKI SELECT)

はじめに

　フェチと銘打っているけれども、その辺の視点があまり前面に出て来てはいない印象がある。ヌルくてイマイチと評するか、ラブコメ的で望ましいと評するかは読者次第かな。俺は後者。ダークで救いの無いオチが皆無というのも今この瞬間の俺の好みに合致していて良い。

「ホケンの品格」

　女子保険外交員のコンビが枕 + 後輩の破瓜という話。ともすればダークになりそうな設定とかラストなのに明るめに見えるのは、後輩女子がおっとりしている処女だからなのか。

「ブルマでオジャマします」

　ハウスキーパーを頼んだら、モロ好みの女性が体操服姿で来てしまい……という話。女の子が積極的でテキパキしているんだけれど、男の子のコトを上手くいなしているようにも見えて、この後2人がどうなるのかちょっと気になる。

「THE DOG & OFFICE LADY」

　デキる先輩(？)OLと彼女に忠犬振りを発揮する男子社員の話。OLの制服は確かにフェチ要素だけれども、そこはあまり強く示されていなくて、女子が自分になついてくる男子に対して感じる母性本能の入り混じった好意みたいなモノの方が強く示されているかしら。

「女医H」

　風邪をひいた主人公が入院した先で美人女医と出会い、彼女からの依頼で新薬の試験を手伝うことになり……という話。女医がいつでもカタめの漢語を使う辺りに魅力を感じれば楽しめるんじゃないかな。

「人生は官能小説より奇なり？」

　幼馴染みの官能小説家志望の女子に「リアルな表現のためにHを経験したいの♥(大意)」とおねだりされて……という話。コスプレだの玩具だの露出気味だのの方向へ行ったりするのは個人的にやりすぎ感が漂いますが、最後はまあまあハッピーエンドなんじゃないのかな。

「メガネな彼女の好奇心」

　残業中の息抜きにアダルト画像を見ているところを同僚の女子に目撃された。そういうコトに興味があるけど処女だという彼女から「自分とセックスしてほしい」と言われて……という話。どんどん開花していく様はまあ悪くないんだけれど、個人的にはちょっとはっちゃけ過ぎかなと思ったり。

「入院病棟24:00」

　新人の看護師さんが赴任した入院病棟には、夜間も大事な仕事があって……という話。多人数プレイなのか、1対1でステディーな形なのかが、いまいちハッキリしていないので、個人的にはもやもやした後味を感じてしまうかな。

「ふたりの秘密」

　密かに兄の恋人に憧れを抱いて居いる男子。兄からぞんざいに扱われている彼女と次第に距離が近づいていって……という話。まあ、内容についてこれ以上特にコメントすることは無い。個人的には割とお気に入り。

「I LOVE クッキング」

　突然職場の新人の女の子が自分に昼食の弁当を持参するとか、家に来て夕食を料理してくれるとか言い出してきて……という話。これも個人的に割りとお気に入りかな。料理関係のネタが出てくるとなると、評価が上がるという性質の人間なので、少し過大評価になるかもしれないけど。

まとめ

　繰り返しになるけど、「フェチ」という言葉に男性が連想する即物的なエロティシズムと言うよりは、シチュエーションとか男女の関係性に起因するエロティシズムの方に重きを置いている印象。まあ、作品自体は悪くないのですが、カバーとか帯とかの宣伝文句には幾分やりすぎ感が漂います。もうちょっとラブコメとかリリカルとか、そういうキーワードで行けばちょうど良かったかも。

おまけ

　何か写植の位置のせいなのか裁断が悪いブツに当たったせいなのか、各作品のタイトルが切れている部分があった。そういった意味では微妙に出来が良くないような。コンビニ売りとかを意識するとしょうがないのかなあ。